about Dalmatian
ダルメシアンと聞いて、何を思い浮かべるでしょう。
ぶちぶちの水玉模様、ディズニーの101わんちゃん、「猟犬?」と聞かれることもしばしばで、素敵なモデルのようなイメージもあればドッグランで全速力で走る暴走族のようなシーンを目撃してしまった人もいるかもしれません。ここではダルメシアンという犬種について、スタンダードと私たちの飼育経験をもとに紐解いていきます。
FCIスタンダードNo153 「ダルメシアン」
ORIGIN(原産): Croatia.クロアチア
GENERAL APPEARANCE(一般概要): Mesocephalic. Head prismatic form
with hanging ears. The body is rectangular, strong, muscled and
distinctively spotted. The movement must be elegant. The sexual
difference must be visible.
BEHAVIOUR AND TEMPERAMENT(ふるまい・気質): Pleasant temperament,
friendly, not shy or hesitant, free from nervousness and aggression.
Lively kind, loyal, independent and easy to train. The Dalmatian
likes water and outdoor activities. It has a marked hound instinct.
SIZE AND WEIGHT:
Height at the withers: Males 56 – 62 cms. Females 54 – 60 cms.
Dogs with excellent type and balance should not be penalised if
above the upper limit.
※スタンダードより抜粋。
訳:Sally Takahashi
<歴史>
「ダルメシアンの起源は依然不明で、憶測あるのみである。古代エジプトの墓で発見された彫刻や16世紀から18世紀に描かれた絵からダルメシアンは数千年前から存在していたと推測される。14世紀行こう、特に1719年以降の教会の歴史志から、この犬種の起源が地中海地域、特にダルメシア海岸の近くであったということが読み取れる。」(JKCスタンダード第10版)
<馬車犬としてのダルメシアン>
かつてダルメシアンの活動は多岐にわたっていました。軍用犬、ヒツジの番犬、その嗅覚を利用し鳥獣猟やレトリーバーとしても使われました。その記憶力の良さからサーカスやステージドッグとしての役割もかっていました。今でも海外のサーカス団にダルメシアンを見ることがあります。
しかし、ダルメシアンが最も重要視されたのは馬をリードする唯一の馬車犬としてでした。
「この犬は、身体的に路上の仕事に向いている。体格はスピードと持久力がちょうどよく調和している。歩行には動作の美しさと敏捷さがあり、また旅の終わりまで元気に行けるだけの耐久力、生命力、不屈の精神を持っている。」
(AKC公認全犬種標準書)
ダルメシアンはことに動くことが大好きで、暑い日も寒い日も外に出ればいつまでも走っていられるようなエネルギーを備えている犬です。このエネルギーが備わった理由はまぎれもなく馬をリードして長距離を旅してきた歴史が忘れられることなく受け継がれているからです。
<ダルメシアンと難聴>
ダルメシアンの代表的な疾患に難聴があります。
アメリカで行われた調査によると、ダルメシアンの20~30%が両耳、または片方の耳が聞こえないという結果が出ています。難聴は遺伝性です。ダルメシアンはかなしいかなスポットのきれいさが重視されて繁殖され、その内面に目を向けられてこなかった事実があります。ダルメシアンのスポットの要素であるメラニン色素は、聴覚に影響があります。色素欠乏は、聴力だけではなく、視力や皮膚、内臓疾患にまで影響を及ぼします。難聴で突然死することはないけれど、決して軽視してはいけない理由がそれです。
また、ダルメシアンの難聴とブルーアイは密接な関係があり、ブルーアイの犬の難聴の確率はとても高くなるのでJKC、FCIではブルーアイのダルメシアンの繁殖に用いません。
よくペットショップなどで難聴のリスクのことは無視して、セールストークで「とてもレアです!」とうたわれることがあります。
ブルーアイを、さもレアで特別であるかのように扱い、もてはやされる風潮は悲しく、この犬種を愛するものとして恥ずかしいことです。ダルメシアンのことが大好きなみなさんはこの知識を片隅に置いておいてくださいね。
因みに片耳難聴の場合、ほとんど生活に支障がありません。普通に生活できます^^
当犬舎は2015パピーから聴覚検査を実施しています。
<ダルメシアンと結石>
ダルメシアンの疾患の一つとしてよく知られているのが、結石ですね。
体質的に尿酸値が高く尿酸代謝異常を引き起こし、結石ができやすくなっています。
イメージ的には人間の痛風ですかね。
オスの方が発症率が高い理由は、尿管が長く曲がっているためと、マーキングのために尿を膀胱に溜めやすいからです。
また、季節的には寒くて水を飲まなくなる秋~冬にかけて出やすいです。
もともと高尿酸なダルメシアンですが、室内飼育による運動不足、運動不足で水を飲まない、おしっこを気軽に出せない、高たんぱくなフードやオヤツ、それによる太りすぎ(たんぱく質が核になって結石を形成させやすい状況に・・・)がきっかけになって発症することが多い現代病という一面もあります。
でも対策は至ってシンプルなので、砂が出たりしてなくても以下の事は気にかけてやってくださいね。
・しっかり運動をさせて代謝をよくする
・お水をいつでも飲めるようにする
・ドライフードに水や白湯をかける
・おしっこを出す機会を増やす(4時間おきが目安・夜はその限りではない)
・高たんぱくなおやつをあげすぎない
<ダルメシアンと暮らす>
私たちが最初のダルメシアン、ジルを迎えたのは1999年の夏でした。それからずっと、生活の傍らにダルメシアンがいます。このタフでエネルギーに満ち溢れた犬種と暮らしてきて思うのは、良くも悪くもユニークな犬だなということ。
教えていなくても見て覚え、自分の考えで行動していく力が強い犬だと思います。それがいい方向へ作用していけばいいのですが、時に思いもよらぬ方向へ行動して行ってしまうこともあります。
飼い主がリーダーシップをとって、YESとNOをはっきり示していくことが必要となります。いたずらや破壊など、早期に止めていかないとエスカレートしてしまいます。
犬をちゃんとコントロールできれば、ダルメシアンはとっても表情豊かで考える力に富んだ賢いパートナーです。
人の言葉が全部分かっているような、いまにも話しだしそうな思慮深い表情に魅了されますね。
ダルメシアンもまた、人との密なコミュニケーションを求めてきます。
ことに愛情深く、家族のことが大好きで、行動の一つ一つが、人の予想を越えるような、そんなこともしちゃうの?と言ってしまうような、犬というより小さな子供のような存在であると、日々思うのです。
ダルメシアンのこの聡明な一面について本にはこのように書かれています。
「ダルメシアンは働きぶりと人目を引く見ためを重要視されて選ばれた犬である。ダルメシアンは、人、馬車、馬たちと行動を共にすることに自信を持っていなくてはならない。通りのざわめきに冷静さや注意を失うことなく、馬を守り、安全とスムーズに交通が運ぶための道を切り開くという与えられた仕事をこなす。
ダルメシアンは自分で馬車が進むうえで何が邪魔でありそうでないのかを自分で判断できるくらいに十分に賢くなくてはならず、道にある進行の妨げになるものを排除する能力にたけている必要がある。
なぜスタンダードがこのような(戦闘機のパイロットさえもが賞賛するような)気質と表情や行動に見られる高い知性を求めるのか、その仕事に求められる能力から理解することができる。」
馬車の伴走犬であった長い歴史が与えてくれた満ち溢れる生命力と、考える力。
馬車と走る仕事はなくなった現代でも、ドッグショーのリングや様々な競技、海でも山でも、どこまでも一緒に付き合ってくれる最高のパートナードッグであることに変わりはありません。感情のキャッチボールのようにたくさんのリアクションが返ってくるのは、ダル飼いの楽しみの一つではないでしょうか。
ドッグスポーツやアウトドアが好きなご家庭にはぴったりの犬種ですが、一緒にガーデニングしたり、ソファーで寝そべったり、ウォーキングのお供にしたり、ショッピングに行ったりと、楽しみ方はいろいろです。
馬車と一緒に何十キロも走るために作られた犬種ですから、きちんと運動量を確保する必要があります。嗅覚を使った遊びを通して脳を疲れさせるような方法も取り入れながら犬の「やりきった~!」という満足感につなげていく方法もあります。人間のペースに合わせた徒歩の散歩は犬にとっての運動とは本質的に異なり、基本的に自由運動を好む部分もあるので、ドッグランで自由走らせてあげることも大切です。自転車引きもよいでしょう。
添加物のない良質な食事、運動、土の上での遊び、日光浴が犬の気質の安定につながります。
<我が家の運動方法>
・庭で走り回って遊ぶ、おもちゃの取り合い
・散歩のときに広い公園でロングリードでボール投げ
・必要に応じで自転車散歩
など
年間17万頭もの犬猫が殺処分されているこの日本において、犬を繁殖する社会的意味をずっと考えていました。いい犬とは一体どんな犬のことを指すのでしょう。その答えを、2013年にメルシーが生んだ男の子DAVEが教えてくれました。「気質の安定したダルメシアンと共に過ごす毎日はこんなにも楽しくて幸せ。」我が家の繁殖は趣味ですが、趣味だからこそ抜かりなくこだわりぬいた最高のものを求めているんです。
私たちが愛情いっぱいに育てたダルメシアンが、新たなご家族のもとにハッピーを届けて、この犬と人生を共にできてよかったと思ってもらうことができたらそれほど嬉しいことはありません。そう思っていただけるように、日々努力していきます。